御題目次

かぐや姫





今は昔。
精霊廷のとある屋敷に、一人の美しき姫ありけり。
名をば朽木ルキアとなむいひける。肌は白く、眼は清らか、さながら闇夜を照らす月の如し。
いかでかこの姫を我が物にせむとて、狙いたる男あまたあり。貴賎を問はず昼夜を問はず、姫の周りには男の姿が絶えざるとなむ。




ある日、しつこく求婚する男たちに、姫は贈り物を求めた。
曰く、次の贈り物を持ってきた男と私は夫婦の契りを結ぼう、と。
高価で危険な贈り物に、これに応える男は自ずと限られる。男たちは愛しい姫への贈り物を手に入れるべく、我先にと旅に出た。
これは、犬死をも辞さなかった男たちの喜劇、もとい悲劇である。








「藍染隊長」
「どうした?ギン」
「尸魂界を出る時に潰しはったメガネのことですけど」
「ああ」
「あれ、どうしはりました?」
「?あの時に粉々になったよ」
「ええええっ???」
「あれがどうかしたのかい?」
「あんな大切なもん、なんで大事に取ってへんのですかっ!?」
「大切?もう用がないだろう、あんなもの」
「あんなものって!ボクの将来がかかってますのに!」
「…将来?」
「あれ、銀蜻蛉のメガネですか?」
「そうだが」
「ほなちょっと行って来ますー」
「待つんだ、ギン」
「同じのまた買うて来ます、そしたらまた『私が天に立つ!』言うて握り潰して下さい」
「それは困るな。手に刺さって結構痛かったんだ」
「それくらい我慢して下さい」
「それくらい…」
「止めんといて下さい」
「尸魂界に再び行くということは、すなわち僕を裏切るということだ」
「そんな殺生な」
「だが場合によっては許可しないでもない。理由を聞かせてもらおうか」
「…ルキアちゃんが欲しい言うてるんです。あれ持って来たら嫁さんになってくれる言うて」
「ちょっと…僕も尸魂界に行って来ようかな」
「持ってはるんですか!!」
「捨てるわけないだろう!?大事な記念の物じゃないか!…ところでギン、その構えは?」
「射殺せ、神槍!!」
「砕け、鏡花水月!」




贈り物その壱“藍染の握りつぶしたメガネ”












「おい、オヤジ」
「いらっしゃいませ、これは更木隊長。どのような宝石をお探し…」
「これをよこせ」
「は?」
「この石を俺によこせと言ってんだ」
「…現金はお持ちでしょうか」
「いくらだ」
「2000万貫でございます」
「一角、カネ」
「そんなカネないっすよ、隊長」
「だそうだ。負けろ」
「負け…いえいえ、これは大変貴重なものでございます。そう簡単には…」
「何か言ったか?」
「ちょっ…!!!隊長、霊圧引っ込めて下さい!!霊圧で宝石にヒビが…っ」
「こいつが負けねぇから仕方ねぇだろ」
「頼む店長!ちょっと負けてくれ!!」
「いいや私どもも商売がかかっております!例え隊長のお願いとあっても!」
「弓親!隊長をなだめろ!」
「ねぇ一角、僕こっちの宝石がいいなぁ。どれも似合いすぎて困っちゃうよ」
「うわああ宝石が砕けた!!店長!店ごと壊れるぞ!」
「いいえわたくしも商人としての自負がございます!!」
「てめぇ殺されてぇのか」
「ひっっっ!!」
「あああ宝石が粉々にっ!!!」
「つるりーん!何してるの??」
「!!やちる!てめぇは近づくな!」
「えーどうしてー?あ…は…はっくしょーんっ!!」
「「「ああああーーっっっ!!!」」」




贈り物その弐“ルキアの瞳の大きさの紫水晶”












「…あのな、松本」
「はい?なんでしょ、日番谷タイチョー」
「ちょっと教えてもらいたいことがあるんだが…」
「なんですか?」
「…う」
「???」
「ぐぐ…」
「なんですか、勿体ぶらないで言って下さいよー」
「…ちっ!くそっ!いいか、これは俺が知りたいんじゃないからな!人に頼まれて聞いてるんだ!」
「はいはい、だから何ですかってば」
「どうしたらそんなに胸がでかくなるんだっっ!」
「…」
「何とか言え、松本!」
「…ぶっ。あははははははは!!!」
「わ、笑うな!!」
「あははは…ああ苦しい!あははタイチョーってばカワイー!!」
「か、可愛い??」
「そうですよね、タイチョーもそんなことに興味をもつお年頃ですよねー」
「ちっ、違う!だから、人に頼まれて…!」
「まぁまぁ、そういう言い訳はよくあるテですよー」
「言い訳じゃない!本当に人に頼まれたんだ!」
「あ、修兵!いい所に来たー!」
「…ちょ!松本、お前!!」
「うちのタイチョーってばさー」
「松本、命令だ!それ以上喋るな!!」
「じゃぁ、頼んだ人って誰です?」
「…う」
「ほらー、言えないじゃないですかー」
「松本お前、人の色恋に口を出すのか」
「色恋ーっ!?修兵、聞いた??タイチョー、好きな人がいるんですか?誰?誰?誰?」
「ああもういい!他のやつを当たる!」
「他のって…タイチョーに巨乳のお友達なんているんですか?雛森はまな板ですよー」
「あーくそっ!なんでよりによって俺がこの贈り物なんだ!!」




贈り物その参“胸が大きくなる方法”












その頃朽木家の屋敷では、いつもと変わらない、いや男たちが来ない分いつもよりもずっと静かで穏やかな時間が流れていた。
「あの、兄様」
「どうした、ルキア」
「昨日から急に誰の姿も見なくなったのですが…」
「静かになって良かろう」
「それはそうなのですが…」
「どうした。よもや、あの輩の中に思い定めた人でもいたのではあるまいな」
「いえ、そのようなことは。ただ、私が何か失礼なことをしたのではないかと…」
「そのような心配は無用だ。ここで安らかに暮らしておれば良い」
「はい。ありがとうございます、兄様」
「うむ」




この兄の謀りたばかりと知る者、未だなく、姫は屋敷にて兄と睦まじく暮らせしとぞ。











中秋の名月頃に書き出したネタだったんですが…


御題配布先…1204

御題目次


Copyright(c) 2007 酩酊の回廊 all rights reserved.