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イケ☆パラ第3話〜寮室〜





寮室に入ると、恋次はドアの鍵をカチリと閉めた。
先に部屋に入ったルキアは、どさりとベッドに身を投げる。そのままくったりと動かないルキアを、恋次は心配そうに見遣った。
「疲れたか?」
少し間があって、ルキアは溜息と同時に呟いた。
「…本当に男ばかりなのだな…」
「そりゃそうだ、男子校だからな」
「保健教諭まで男だったではないか!」
「あー、ありゃがっかりだな。女は…保体の卯之花先生…だったか?あの人だけだな」




8畳ほどの寮室は2名ずつ使うことになっていて、二段ベッドと小さな冷蔵庫、机と棚が二つずつ設えてあった。
ルキアと恋次が同室になったのは、偶然なのか、ルキアの義兄が何か手を回したのか。
いずれにせよ、少しでも近くでルキアを守ることができて、恋次は心底ほっとしていた。








元々、恋次は他の高校を受験するつもりだった。
ところが、しばらく海外に行っていた幼馴染のルキアは、戻ってくるなり聖・霊廷学園を受けると言い出す。
男子校だ、寮生活だ、と説得しても、小さいころから頑固だったルキアは、もう考えを変えようとはしなかった。
それでほんの少し(本当にほんの少しだけ)迷って、恋次は進路変更することに決めた。
男ばかり、しかも朝から夜まで生活を一緒に生活をする寮生活に、ルキアを一人で放り込むなんて、あまりにも危険だ。
元々の志望校に特に思い入れがあったわけではないし、進路変更はあっさりしたものだった。
自分も聖・霊廷学園を受けることにした、と話した時の、ルキアのほっとした表情が今でも忘れられない。








部屋の二段ベッドは、下を恋次が、上をルキアが使うと決めていた(安全上の理由で)。
けれど上まで梯子を登る気力がなかったのか、下のベッドに横になっていたルキアは、突然くすくすと笑いだした。
「どうしたんだよ」
子猫のように布団にくるまっていたルキアが、布団の合間から、ぴょこりと顔を出す。
「この布団、恋次の匂いがする」




―やべぇ。
一番危険なのは自分かもしれない、と、恋次はようやくこのとき、気が付いた。











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