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イケ☆パラ第2話〜教室〜





がら、と音がして教師が入ってくると、それまでざわついていた教室はぴたりと静かになった。
「全員そろってるな?」
教壇に立って朗らかな笑顔を見せた教師は、若い男だった。
白い半袖シャツに真っ青なネクタイを締めて、日に焼けた肌がいかにも健康そうだ。
「俺は担任の志波だ。1年間、よろしくな。まぁベタだが、自己紹介から始めるか!」
うんざりした溜息が教室の中にそっと広がったが、快活そうな担任は、少しも気にならないようだった。




席はあいうえお順に並んでいるので、最初の自己紹介は阿散井恋次だった。
「阿散井恋次っす。3年間で体を鍛えて、強くなるのが目標ス」
2番目に立った浅野啓吾はぺらぺらと喋り続け、担任の志波に
「はい、終了!」
とばっさりと斬られ、笑いが起こった。おかげで教室の雰囲気がいくらか和んだ。
その次に、ルキアの右隣の席の男子。
「石田雨竜です。趣味は手芸と読書。」
眼鏡を軽く押さえて話す様子はとても知的で、固く隙のない雰囲気を漂わせている。
それから数人の自己紹介が続き、ルキアの前の男子が立ち上がる。
「吉良イヅルと言います。伝統ある聖・霊廷学園に入ることができて、と…とても嬉しいです」
震える声で言うと、脱力したように椅子に腰を下ろす。



―自分の番だ。



ルキアはごくりと唾を飲み込んで、立ち上がった。女だとばれないように、なるべく声を低く絞る。
「朽木ルキアです。よ、よろしくお願いします。」
すぐに、椅子に座る。変に思われなかっただろうか、と体を固くして俯いていると、がた、と音がしてルキアの後ろの席の生徒が立ち上がった。
「黒崎一護。特技なし、以上」
そして椅子を引く音がして、また次の生徒が立ち上がる。
―だ、大丈夫…だったのだな…?
そっと胸を撫で下ろし、息を吐く。




次、また次と生徒たちの自己紹介が続く。
最初のハードルを越えた、その緊張と疲労で精いっぱいなルキアは気が付かなかった。
背後の黒崎一護が、じっと、自分の背中を見つめていることに―











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